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無料のおもしろネタ画像『デコじろう』用アイコン02 《イタリアの記憶11》・・・本当に恐ろしかった一夜   



 イタリアに着いて半月の頃。お正月が過ぎて早々の出来事です。
 その日は、深夜12時前に仕事を終え、デザイナーと一緒にお酒を飲みに街へくり出しました。会話とアルコールで気分良くなり、ホテルに戻ったのが深夜2時。私はフロントで鍵を預かり、5階にある部屋へと向いました。

 私の泊まっていたホテルは、長期滞在者向けのホテルで、部屋のドアを開けると日本でいう玄関のようなスペースが3帖ほどあり、左にはバスルームのドアとキッチンのドア。玄関の正面にはベッドルームに入るドアがあります。ベッドルームに入ると、左側中央にベッドが横に置いてあり、ドアの正面は窓です。その部屋はかなり広く、12帖以上あったように思います。

 ヨーロッパの建物は、どこも暖房設備が行き届いており、部屋の中ではTシャツだけで十分に過ごせます。冬の暖房費代が高額になってしまう為、アパートやマンションは約4〜5ヶ月分の暖房費を12ヶ月で割って、毎月家賃と一緒に支払うのです。

 その日、私はシャワーを浴びた後、Tシャツと短パンで早々にベッドに入りました。暗がりが苦手な私は、いつものようにベッドサイドのライトを点けたまま休みました。

 深夜4時、ふと目が覚めました。本当に“ふと”目が覚めたという感じです。私は左側の窓を向いて寝ていたのですが、何気に右側を向いたら・・・

 私の右手を両手で握りしめて、ベッドにひざまずいている男の人がいるんです。じっと私の寝顔を見ていたようです。私はあまりの恐ろしさに叫び声もあげられませんでした。(まるで声が出ませんでした。人間は本当に恐ろしい時、声が出ないものだという事が分りました)

 英語で「出て行って」と何度も言いました。男の人は「何故そんな事を言うんだい?」と言ったように思います。私は毛布で全身を覆い、窓から逃げようか、部屋から飛び出そうかと思案しました。が、窓の外は雪。5階から飛び降りるのは不可能。それにTシャツ1枚で部屋の外に出てもどうしようもない・・・結果、「出て行って」と繰り返す事しか出来ませんでした。
 何度も何度も言ううちに、その人は本当に出て行ってくれました。

 その男の人は、ホテルのフロントマンでした。合鍵を使って入ってきたのです。14歳くらいにしか見えない日本人の女の子が、毎夜遅くにホテルに戻ってくる訳ですから、その人も私の事を不思議に感じていたのかもしれません。
 
 破裂しそうなくらいに私の心臓はどきどきしていました。やっと出て行ってくれたという安堵もありましたが、恐怖心が覚めず・・・それでも序々に鼓動が治まり始めた頃・・・「カチャ」とドアの開く音が聞こえ、またその人が入って来たのです。彼はココアをトレーにのせ「シニョリーナ、ココア飲む?」と笑顔で言いました。私は「出て行って」を繰り返しました・・・その時はすぐに出て行ってくれました。
 私はドアの内側にスーツケースを立て掛け、外からドアが開けられないようにして一晩を過ごしました。

 翌日、デザイナーにその夜の件を話しましたが、親身に話を聞いてくれません。(デザイナーはイタリア人ですが、3年間日本で暮らしており、私たちは日本語で会話をしていました)こうなったら、自分の身は自分で守らなくていけない!と腹をくくり、丁度日本から大きなパッキンが沢山届いていたので、部屋に入るとすぐ、ドア前にパッキンを積み上げていました。

 そのホテルは四つ星クラスのホテルでしたが、殆ど毎夜彼がフロントに立っていました。想像ではありますが、彼はお金の為に毎夜勤務していたのではないでしょうか。目つきもおかしかったので、薬をやっていたとしか思えませんでした。
 事件から数日後、アパートが見つかった為、やっとホテルから出る事が出来ました。

 その約2年後、私のイタリア語が随分上達した頃、昔話を話すかのようにデザイナーにホテルでの出来事を話しました。「本当にあの時は冷たかったよね〜こんな事があったのに、大丈夫だよって言ってとりあってくれないんだもん」と、笑って話す私の前でデザイナーの顔色はみるみるうちに変わっていき・・・。彼は、ホテルマンがドアの前に来ただけだと思ったらしいのです。そういう事だったら、すぐにホテルを変えただろうし、警察に届けたのに・・・と悔やんでいました。
 当時、私たちは沢山会話をしていた筈ですが、実は半分も通じていなかったのかもしれません。(苦笑)

《追記》これからイタリアへ行こうと思っている方へ
上記事件は、通常起こりえない事ですので、安心して旅行をお楽しみ下さい。
上記のホテルは現在も実在しますが、部屋に入ってきた男性は、その後すぐ、私の件とは別件で解雇されたようでした。

by sole-e-luna | 2007-06-08 01:13 | 事件

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