《イタリアの記憶83》・・・南イタリア
イタリア滞在中の八月のバカンスには、知人の別荘がある南イタリアのオートラントという海辺の街で過ごすのが習慣でした。
日本人の私にとって、オートラントは遊べるところがあまりなく、アドリア海に面した波のあまり来ない砂浜で、退屈な時間の多くを過ごしていました。
知人のおじいちゃんは、そんなオートラントの入り江に面した家に一人で住んでおり、私は一日に一度は必ずおじいちゃんの家にカードをしに行きました。時には一日の半分をおじいちゃんの家のバルコニーで過ごす事もありました。もっぱら私たちの遊びはスコーパーというイタリアのカードゲームで、私は負けるのが悔しくて、おじいちゃんを相手に勝つまでは延々と挑戦し続けたものでした。
ある日、夕方までスコーパーをしていた時のこと・・・。おじいちゃんの手がふいに止まり、夕焼けで朱色に染まった海を観ながら呟くように話し始めました。
きょうこ、何てきれいな海なんだろう。
私は一日中海を見続けていても飽きる事がないんだ。
朝日できらめく一日の始まりを告げる海の色・・・
眩しいくらいのエメラルドグリーンに輝く昼間の海の色・・・
月の灯りがゆらめく漆黒の海の色・・・
グレー色した哀しげな雨の日の海の色・・・
復活祭が過ぎると、若者たちはまだ少し肌寒い海に入り始める。
若者たちを迎える春の陽気な海の色・・・
海の色は毎日同じ色がないんだ。
一分たりとも同じ色をしていないんだ。
そう言って、おじいちゃんは嬉しそうに遠くの海を見ていました。
私の脳裏には今でも時折、バルコニーでロッキングチェアに揺られ、美しく朱色に染まった海を見つめるおじいちゃんの姿が浮かぶのです。
それはまるで映画のワンシーンのように・・・。
おじいちゃんが見ていた風景
本当にキレイです。
この記事は、昨年アップしたものです。
今日は、気持ちいいくらいのお天気で、すがすがしい風が吹いていました。
今日のような天気の日は、南イタリアを思い出します。
by sole-e-luna | 2008-07-02 02:00 | 心に残る風景