《イタリアの記憶7》・・・警察に包囲される
イタリアに着いたのは12月19日でした。
数日後にはクリスマスホリディがやってきて、クリスマスはパリで優雅な休日を過ごしました。
ここまでは、良かったのです。ここまでは。
そして、ミラノに戻った私は現実を見る事に・・・
ミラノに戻った私の前には、約2ヶ月の間にコレクションのパターンを一人で全て引かなくてはいけないという重労働が待っていました。
毎日毎日、朝から深夜まで鉛筆と定規を振り回し、それこそ鉛筆を一日1本使いきるような勢いでパターンを引き続けていました。(本当に一本使いきっていました)
私の仕事が終わるのを、デザイナーは呑気に待っているのですが、待たれるのが嫌いな私は、ある日を境に先に帰ってもらうようにお願いしました。
その日から私は仕事が終わるとタクシーを電話で呼び、一人でホテルに帰るようになったのです。
ある日、いつものようにタクシー会社に電話をし、こちらの住所と電話番号を言うと、何番のタクシーが何分後に到着すると答えてくれたと思うのですが、当時の私は言葉がまるで分らない状態で、電話を切ったら急いで外に出て、目の前に停まったタクシーに乗ればOK! という位にしか考えていませんでした。
が、待てど暮らせどタクシーは来ないんです。
当時のアトリエはモンテナポレオーネ(高級ショッピング通り)にあったのですが、既に深夜3時を過ぎており、気がつくと1台の車が私を見て、行ったり来たりしている始末。建物の門はオートロックで閉まっており、鍵を持っていない私は建物に入る事も出来ず「さっさと歩いて帰ろう」と決断しました。
歩いても長期滞在用ホテルまでは15分位だったと思います。
周りを気にしながら、脇目もふらず急ぎ足で歩いていると、ゆっくりと護送車のような車が近づいてきました。
何だかイヤな予感・・・早く過ぎ去ってくれぃ〜とは思っても、私の横を護送車がゆっくりと付けてくるのです。
周りには歩いている人もいなく、車も走っていません。当たり前です。明け方前ですから。
そうしたら、護送車が私の横でいきなり停まり、中から警官らしき人が一気に5人くらい下りてきて、私を取り囲んだのです!
以下、お互いたどたどしい英語での会話です。
「君は何人だ」
〜日本人です〜
「パスポートを見せなさい」
〜あなたは誰ですか?〜
「警察だ」
〜”police”と書いてないから警察じゃない!私は警察の人でない人にパスポートは見せない!〜
その人は ”polizia”(ポリツィア) と書いてある胸の刺繍を摘んで「私たちはポリスだよ」
〜いやっ!ポリスじゃない!スペルが違う〜
その人は困った顔をして「本当にポリスなんだよ」
〜・・・分った、パスポートは見せるけど〜
と言って、警官らしき人にパスポートを差し出す
じっくりと私のパスポートをチェックする警官・・・
「どうしてこんな時間に一人で歩いているんだい?」
〜仕事をしていてタクシーを呼んだんだけど来なかったから〜
「どこまで帰るの?」
〜すぐそこのレジデンス〜
警官はパスポートを私に返してくれ
「気をつけて帰るんだよ おやすみ」
と言って、別れたのでした。
その後、”Polizia”(ポリツィア)とはイタリア語でポリスの事だという事を、すぐに知りました。
我ながら、若かりし頃の私は度胸があったなぁと関心してしまいます。
しかし、上のやりとりはまるで「スネークマンショー」を思わせる会話ですよね(笑)
(スネークマンショーを知っているあたり、年がばれますね)
by sole-e-luna | 2007-06-02 23:00 | 事件